ベイダーたかはしの野球雑記

野球に関する様々な情報/雑感を発信します。

【プロ野球】2軍が強ければ1軍も強くなるのか?【検証】

0.まえがき

こんにちは。最高球速92km/hのベイダーたかはしと申します。

 

プロ野球観戦の醍醐味といえば、もちろん第一は「贔屓チームの勝利」ですが、それと同じくらい「チームの成長」に喜びを見出している方は多いでしょう。1軍2軍問わず、特に若手選手が日々の練習や実戦で力を伸ばしていく姿を見て、そう遠くない将来に黄金期が到来することを妄想する方もいらっしゃるかと思います。

筆者が応援する横浜DeNAベイスターズでは、今シーズン若手野手の台頭が目立っております。ドラ1組の度会隆輝選手や松尾汐恩選手はもちろん、ルーキーの井上絢登選手、高見沢郁魅選手などなど…ここには書ききれませんが、昨シーズンと比べて格段に野手陣の成長を感じられる1年をここまで過ごせています。そのおかげか、今年のベイスターズ2軍は、9月2日現在上位争いを演じることができており、近い将来1軍にも更なるプラスアルファをもたらすものと期待しております。

 

ただ、ここで1つの疑問が沸いてきました。

2軍が強いからといって、本当に近い未来1軍が強くなるものなのか?

と…。

というのも、少なくとも筆者が応援する横浜DeNAベイスターズに限って言えば、そんな覚えはありません。

 

こんな疑問を抱き、今回の記事を執筆するに至りました。どうかお付き合いの程よろしくお願いいたします。

 

 

 

 

1.検証方法について

本記事では、

仮説:「2軍のチームが強ければ、数年後1軍のチームが強くなる」

↑の仮説を立てて、検証を進めることとします。

あくまで、1軍や2軍の実際のチーム勝率を用いて検証を行いますので、投手別/野手別の成績や、個々の選手成績等にはフォーカスが当たっていない点について、ご承知おきのほどをお願いいたします。また、筆者はピタゴラス勝率といったの高度な指標を使いこなす力量もございません。ピタッゴラッスイッチ♪

 

【検証方法】

  1. 2005年~2023年の19シーズンについて、「1軍チーム勝率」と「2軍チーム勝率」を集計する。
  2. 1のデータを使って、以下の相関係数(※後述)を求め、比較する。

  「2軍チーム勝率」と「0年後(同じ年)の1軍チーム勝率」の相関係数

  「2軍チーム勝率」と「1年後の1軍チーム勝率」の相関係数

  「2軍チーム勝率」と「2年後の1軍チーム勝率」の相関係数

    ・

    ・

    ・

  「2軍チーム勝率」と「5年後の1軍チーム勝率」の相関係数

 

相関係数

高校数学などで学習した方が多いかと思いますが、念のため軽く簡単に説明します。

相関係数とは・・・2つのデータの間にある関係の強弱を測る数値 です。(wikipediaより引用)

算出された相関係数の数値については、以下のよう評価するのが妥当と考えています。

 

  • 相関係数0.7以上1以下・・・強い正の相関がある(2軍勝率と1軍勝率は大いに関係している
  • 相関係数0.4以上0.7未満・・・正の相関がある(2軍勝率と1軍勝率はけっこう関係している
  • 相関係数0.2以上0.4未満・・・弱い正の相関がある(2軍勝率と1軍勝率は多少関係している
  • 相関係数0.2未満・・・正の相関は認められない(2軍勝率と1軍勝率はほぼ関係がない

 

要するに、相関係数が1に近ければ近いほど「2軍勝率と1軍勝率の間に強く関係している」、相関係数0に近ければ近いほど「2軍勝率と1軍勝率の間に関係がない」と思っていただければけっこうです。

 

2.検証結果

2005年以降のNPB12球団について、2軍勝率と1軍勝率の相関係数を求めた結果が上表の通りです。

ご覧の通り、2つの数値の間にあまり強い相関は見られませんでした。1年後の1軍勝率について弱い相関がみられる程度ですね。相関係数から言えることをまとめると、

  • 「2軍勝率」と「0年後(同じ年)の1軍勝率」には全く関係がない。
  • 「2軍勝率」と「1年後の1軍勝率」には少し関係がある。
  • 「2軍勝率」と「2~4年後の1軍勝率」にはあまり関係がない。
  • 「2軍勝率」と「5年後の1軍勝率」には全く関係がない。

となります。

 

ただ、後述しますが、長い暗黒期を経験した横浜DeNAベイスターズについては、他球団には全く見られない異様な勝率推移をたどっていましたので、これについては例外的な外れ値とみなし、横浜を除く11球団に絞って改めて相関係数を取りました

 

2005年以降の横浜を除くNPB11球団について、2軍勝率と1軍勝率の相関係数を求めた結果が上表の通りです。こちらの相関係数から言えることをまとめると、

  • 「2軍勝率」と「0年後(同じ年)の1軍勝率」には全く関係がない。
  • 「2軍勝率」と「1~2年後の1軍勝率」には少し関係がある。
  • 「2軍勝率」と「3~4年後の1軍勝率」にはあまり関係がない。
  • 「2軍勝率」と「5年後の1軍勝率」には全く関係がない。

ということで、12球団で相関係数を取った時の傾向が少し色濃く出ている印象です。

 

次の項からは、最も2軍勝率がその後の1軍勝率に良い影響を与えたと考えられる例と、その逆の例について記載します。

 

※サンプル数が少ないため、これ以降については、さらに素人の推測でしかないレベルの記載になる点についてはご了承ください。

 

 

3.最も2軍勝率が近未来の1軍勝率に関連したチーム:広島東洋カープ

今回の集計期間で、最も「2軍勝率が近未来の1軍勝率に関連している」と言えたのが、広島東洋カープです。

「2軍勝率」と「1~4年後の1軍勝率」がいずれも0.5前後と高めの数値で推移しており、2つの数値に強めの関係性があることが示唆されています。

特にこの傾向が顕著に出ているのが2010年代でしょう。2012年から2015年にかけて2軍勝率が格段に上昇しており、この期間におけるチーム力の充実がその後の黄金期到来につながったと考えられます。

ただし、この広島黄金期の中心メンバーは、2012年から2015年の期間に2軍で牙を研いでいた選手ばかりではありません。この期間2軍中心で育成された黄金期メンバーの例を挙げると、

等であり、元から1軍で活躍していたメンバー、即戦力ルーキー、助っ人外国人らの力も結集した結果の3連覇であることには留意が必要です。

とはいえ、12球団の中でも、FAやトレードといった他NPB球団からの補強がダントツで少ない広島ですので、その分2軍の充実ぶりが良い意味でチームに競争力をもたらした結果、1軍にも好影響を与えたケースであると推測できますね。

 

 

4.最も2軍勝率が近未来の1軍勝率に関連しなかったチーム:横浜DeNAベイスターズ

一方、今回の集計期間で、最も「2軍勝率が近未来の1軍勝率に関連していなかった」のが、横浜DeNAベイスターズです。

なんと「2軍勝率」と「0~2年後の1軍勝率」の相関係数がマイナス0.3前後であり、「2軍勝率」が良いと「近未来の1軍勝率が悪くなる傾向がある」ことが示唆されてしまっています。

このマイナス相関の原因が、2000年代前半から10年程度続いた低迷期にあることは、表やグラフから見ても明らかです。特に2008年から2012年の5年連続最下位の暗黒期は、こうして表にしてみるとあまりに酷いものです。グロ画像です。

一方、意外に思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、この期間の2軍(湘南シーレックス)は意外にも悪くない勝率を叩き出しています。1軍がダントツ最下位の時期とほぼ同時期の2007年から2010年においても、2軍勝率は0.550前後で推移しており、むしろ2軍勝率だけを見れば明るい兆しを感じてしまいますよね。

この期間2軍中心で育成され、その後1軍でも成績を残した選手の例を挙げると、

等がおり、今見返しても2軍で実戦経験を積む若手自体は悪くない成績を残しているように感じます。

暗黒期の横浜はご存じの通り数えきれないほどの問題を抱えており、その中でも「チームとしての向上心の低さ、競争意識の低さ」が蔓延していたことは、みなさんもよくご存じかと思います。せっかく2軍で芽が出かかっている選手がある程度いたにもかかわらず、ここまで長く暗黒時代を続けてしまった要因は、その意識の低さにある気がします。練習量が多いと言われる広島とは、悪い意味で対照的です。

 

 

5.まとめ

2軍勝率と近未来の1軍勝率は、多少の関係性があると言えるでしょう。ですので、たとえば「2軍が強かったから来年以降1軍もチーム成績向上が期待できるぞ!」とファンがポジっていたとして、それは決して無根拠な願望ではありません。先程の広島と横浜の例でも軽く触れましたが、「2軍が強い」ことで1軍の競争もより激しくなる効果は十分期待できます

しかし、2軍で切磋琢磨したすべての選手が、1軍で成績を残し、競争に勝ち残れるとは限りません。また、チーム1軍戦力強化の手段は、2軍での選手育成だけでなく、FA、トレード、助っ人、戦力外選手獲得、ドラフト等多岐にわたります。

従って、2軍の勝率はあくまでチームの未来を予測する上での一要素にとどめておき、2軍の勝敗自体にはあまり一喜一憂しすぎないのが賢明な見方かと思います。

(筆者は2軍の勝敗でしっかり感情が揺さぶられるので、そのような見方は到底できませんが・・・。)

 

プロ野球ファンにとっては当たり前のようなまとめとなり、大変恐縮です・・・。

 

6.おまけ① その他セリーグ4球団の、2005年以降における1軍勝率/2軍勝率

せっかく集計/調査したので、残る10球団についても勝率表を掲載します。あくまで「ちゃんと12球団分集計したよ!」ということを披露したいだけなので、各球団の成績についてあまり深くは言及しません

 

阪神タイガース

上表の通り、特にAクラス常連だった~2010年あたりは、同様に2軍勝率も良好で、チームとしての充実ぶりが窺えます。近年では、2018年にファーム優勝を成し遂げた矢野燿大監督が、2019年に1軍監督に就任し、青柳晃洋投手をはじめとする2軍選手陣と既存1軍戦力、ドラフト新戦力を融合させ、1軍チーム力を強化したのが印象的です。

 

 

読売ジャイアンツ

波はあれど、全体で見れば、さすが球界の盟主というべき高い勝率を1軍2軍ともにキープしています。近年FA選手獲得という意味では他球団の後塵を拝するケースも増えたものの、積極的なトレードや育成枠活用など、資金力に頼らない強化策も用いながら、チームとして高い競争力を依然保ち続けているのは個人的に好印象です。

 

 

東京ヤクルトスワローズ

常に怪我人の多さに悩まされ、2軍の選手運用にも悩まされている印象の強いヤクルト。ですが、近年では2017年から2018年にファームで高い勝率をマークしており、この時期には村上宗隆選手や塩見泰隆選手、山崎晃大朗選手、高橋奎二投手などのメンバーが2軍で良好な成績を残しており、後の2連覇に向けた戦力の萌芽がみられます。

 

 

中日ドラゴンズ

波は大きいものの、黄金期の2010年前後は2軍も高い勝率をマークすることが多く、特に2軍投手陣には、1軍でも名を上げた面々がずらりといます。近年1,2軍ともに低迷していますが、今年は井上一樹監督の下で2軍成績も向上中です。この2軍競争力をチーム力向上に結び付け、低迷期からの脱却を図りたいものです。

 

 

7.おまけ② パリーグ6球団の、2005年以降における1軍勝率/2軍勝率

続いてはパリーグ6球団の勝率表を掲載します。相変わらず内容について深くは言及しません。

 

オリックスバファローズ

2軍も1軍と同様、時折上位に顔を出すもの、全体的には長い低迷期に陥っていた感が否めません。しかし、2019年に中嶋聡監督が2軍監督に就任すると、2年連続で2軍勝率が5割を超え、中嶋監督の1軍昇格後は宮城大弥投手や杉本裕太郎選手といった2軍の実力者を積極登用。見事2021年からリーグ3連覇を成し遂げています。

 

 

千葉ロッテマリーンズ

時折下位に沈むことはあるものの、全体的に高い勝率をマークすることが多いロッテ2軍。1軍に定着しきれない若手/中堅選手が2軍で結果を残す傾向が他球団より強く、1軍枠ラインの競争が熾烈であったと言えます。昨年/今年と、2軍勝率は低めですが、その中で若手コアが育つかが重要なカギ。個人的には今シーズン2軍で15本塁打放っている山本大斗選手に期待しています。

 

福岡ソフトバンクホークス


ご存じの通り充実した育成環境、質量ともに最高クラスの選手層などのおかげで、チームとして高い競争意識が根付いており、1,2軍も高い勝率をキープし続けています。昨シーズンまで2軍監督を務めていた小久保裕紀監督が、2軍で切磋琢磨した選手たちを1軍にうまく融合させたこともあり、今シーズンの覇権奪回は目前に迫ります。

 

 

東北楽天ゴールデンイーグルス

実は2軍については創設期からなかなかの勝率をキープしている楽天。左の巧打者育成事例が非常に多く、長い間2軍で力を蓄えたうえでキャリア7年目に花開き、球団初の日本一など長年チームに貢献した銀次選手はその好例です。近年もそういった巧打者タイプが2軍で好成績を残しており、1軍枠の競争が非常に激しいです。

 

 

埼玉西武ライオンズ

集計期間において、全体的には2軍勝率の低迷がやや目立ちます。その一方で2015年から2016年には2軍勝率が5割を超えており、この期間では山川穂高選手や外崎修汰選手、木村文紀選手といった山賊打線の中心選手が2軍で台頭しています。今シーズン1軍はかなり低迷していますが、2軍は好調です。近い将来における若獅子の台頭を待ちましょう。

 

 

北海道日本ハムファイターズ

意外にも2軍勝率については低迷し続けている日本ハム。横浜とは逆パターンです。ただ、これはチーム全体の戦力を最大限に活かして1軍で戦ったとみることができるので、むしろ正しい戦力運用がなされていた証拠と言えます。近々2軍本拠地を鎌ヶ谷から北海道に移すとのことなので、2軍のさらなる強化にも期待しましょう。