0.まえがき
みなさんこんにちは。今年の七夕は甲子園球場で試合観戦をしておりました、ベイダーたかはしと申します。(ベイスターズファンとしては忘れたい記憶です・・・。)
前回、横浜DeNAベイスターズの2024年ドラフトについて記事を書いてみましたが、その過程で12球団の戦力状況や今年のドラフト候補についても情報収集しました。ということで、せっかくなので他11球団についても記事を書かせていただこうと思います。
今回は阪神タイガースの2024年ドラフト戦略について考えていきたいと思います。
1.現状整理(投手編)
【表の見方】
- 年齢は「2025年3月31日」時点での数字を記載しています。
- 今シーズンの一軍出場機会が多い順に「赤太字→赤細字→黒字→青細字→青太字」で表記しています。(2024年9月16日時点)
- 育成契約選手は表に記載できていません。
昨年、強力投手陣を大きな武器として38年ぶりの日本一を成し遂げたタイガース。各投手の好不調はあれど、今シーズンも依然強力投手陣を維持しており、編成の面から見ても大きな弱点はない印象です。
まず先発陣ですが、今シーズンエースとしての風格すら漂う才木投手を筆頭に、村上投手、大竹投手、ビーズリー投手、髙橋投手など質とスタミナを兼ね備えた20代メンバーが顔を揃えます。他にもベテランの西勇投手が健在ぶりをアピールしているほか、実績組の青柳投手や伊藤将投手も控えており、タイガースが苦し紛れに先発起用をする印象は他球団と比較しても相当少なかったと思います。ですので、即戦力投手の先発指名の優先度はやや低めと見ています。
次世代を担う先発候補にしても、及川投手、茨木投手、門別投手、西純投手などが一二軍で着実な経験を積んでいます。23年ドラフト組が適応に時間がかかっていることを加味しても、大きな不安はないでしょう。
次に中継ぎ陣についてですが、こちらも現有戦力に大きな不安はない印象です。特に桐敷投手、富田投手、岡留投手という20代前半の面々が一軍で成長したのは大きな収穫で、一気に年齢層のバランスが取れた印象です。昨年活躍したベテラン陣を実力で押しのけて定位置を確保したというのは、チームの未来という意味でも大きいと思います。
もし不安材料があるとすれば、リリーフの登板数に偏りがみられることでしょうか。岡田監督の起用方針ゆえ仕方ないことですが、いわゆる勝ちパターンに負荷が集中しています。ここまでリーグトップの登板数の桐敷投手を筆頭に50登板以上の投手が4人おり、これは12球団で中日と並びトップの人数です。(2024年9月17日時点)
(桐敷投手:64登板、岩崎投手:56登板、ゲラ投手:53登板、石井投手:51登板)
また、蛇足な情報かもしれませんが、二軍で40登板している投手も3人おり、これもオイシックスと並び、14球団でトップの人数です。(2024年9月17日時点)
(川原投手:43登板、佐藤蓮投手:43登板、岩田投手:41登板)
先ほど述べた通り編成的な面では大きな弱点は見当たりませんが、投手陣の負荷を分散する意味でも、今ドラフトである程度投手の枚数を確保できるといいかもしれません。
もっとも、今シーズン川原投手、佐藤蓮投手、岩田投手といった面々が支配下登録され、また23年ドラフト組もプロ適応の道半ばということで、20代前半の中継ぎ候補はまだまだ多く控えています。従って、即戦力候補の中継ぎを指名するにしても、そこに多くのリソースを割くことは避けるべきではないでしょうか。
ここまで述べた通り穴が少ないタイガース投手陣ですが、一方で23ドラフトでは高校生投手を指名しておらず、数年後に向けた投資を行う意味でのドラフト指名は行っていくべきでしょう。幸い今年の高校生投手には投資のしがいがある好素材が多く揃っており、2024年ドラフトでは、高校生を中心に将来性重視で2,3名指名していく方針が良いと個人的に思います。近年のタイガースであればこういった好素材をプロ仕様に育て上げてくれるという安心感もあります。
ということで、ここまで述べたことをまとめます。
現状のタイガース投手陣容を鑑みたとき、今年のドラフトで狙うべき選手は以下の通りです。
【投手指名方針のまとめ】
- 高校生を中心に育てがいのある好素材投手(2~3名)
- 勝ちパターンの負荷分散に貢献できる即戦力候補中継ぎ(できれば1名)
2.現状整理(野手編)
【表の見方(再掲)】
- 年齢は「2025年3月31日」時点での数字を記載しています。
- 今シーズンの一軍出場機会が多い順に「赤太字→赤細字→黒字→青細字→青太字」で表記しています。(2024年9月16日時点)
- 育成契約選手は表に記載できていません。
続いてタイガース野手陣の現状を整理していきます。
今シーズンのタイガース野手陣におけるウィークポイントを一言で述べるのであれば、「センターラインの攻撃力不足」に尽きるでしょう。センター近本選手こそ例年通り球界最高クラスのリードオフマンとして君臨していますが、その他のポジションはここまで物足りない打撃成績に落ち着いてしまっています。特に昨年は粘り強いバッティングを存分に発揮していたセカンド中野選手、ショート木浪選手の不振は、チームとしても大きな誤算であったと思います。
ということで、まずは二遊間のポジションについてみていきます。
今シーズンの12球団のセカンド、ショートで最多試合出場している選手のOPS(2024年9月16日時点)を並べると、
- 阪神 :中野選手(.588)、木浪選手(.541)
- 広島 :菊池選手(.626)、矢野選手(.624)
- 横浜 :牧選手(.831)、森選手(.572)
- 巨人 :吉川選手(.719)、門脇選手(.578)
- ヤクルト :山田選手(.662)、長岡選手(.685)
- 中日 :田中選手(.541)、村松選手(.637)
- オリックス :太田選手(.774)、紅林選手(.620)
- ロッテ :小川選手(.582)、友杉選手(.492)
- ソフトバンク:牧原選手(.706)、今宮選手(.699)
- 楽天 :小深田選手(.581)、村林選手(.584)
- 西武 :外崎選手(.636)、源田選手(.641)
- 日本ハム :上川畑選手(.609)、水野選手(.603)
(※OPS.700以上を赤字記載、.550未満を青字記載)
ということで、タイガース二遊間の攻撃力が12球団でもかなり低いところに位置してしまっているのはおわかりいただけるかと思います。
加えて、タイガースについては、二遊間を守る選手の層が薄いことも大きな問題です。今シーズンここまで二遊間(というかショート)としてレギュラー組の次に出番を得たのは小幡選手ですが、徐々に調子を上げていたところで怪我を負い戦線離脱してしまったのは残念でした。
そして小幡選手を除いた二遊間のサブ選手には、打撃では期待できるものの守備面の不安でほとんど二遊間の守りにつかない糸原選手や渡邉選手と、逆にほとんど打席に立つことのない熊谷選手(と植田選手)くらいしかおらず、攻守ともに計算できる控え選手も現状極端に少ない状況です。
従って、レギュラーだけでなくサブ組も非常に手薄な二遊間については、最も補強の優先度が高いポジションであるように思います。二軍でなかなかの成績を残している高寺選手や遠藤選手の存在を加味しても、即戦力候補の二遊間選手指名は必須ではないでしょうか。
続いてもう一つの弱点であるキャッチャーについてみていきましょう。
日本一に輝いた昨年の時点でキャッチャーの攻撃力は低く、主力である梅野選手、坂本選手のOPSは、2名とも2年連続でOPS.550を下回ってしまっています。
参考に、今シーズン、2024年9月16日時点で、100打席以上かつOPS.600を超えている捕手がいないチームは
の3チームだけということで、タイガースに「打撃型捕手」が一軍にいないことが分かっていただけるかと思います。
加えてこの2選手がベテランといえる年齢に突入していることもあり、伸びしろという面にも多くは期待できず、今シーズン終盤に梅野選手が上り調子になっているとはいえ、2年連続でネックになってしまっているキャッチャーの打力は強化必須でしょう。
ただ、幸いにも二軍では中川選手と榮枝選手が好成績を収めており、彼らには次代の打てる捕手としての期待感が持てます。また、打力の面では課題の大きい主力2人も、守備の司令塔としては依然高い貢献度を誇っています。ですので、総合的に見れば、打力が計算しづらいという課題は大きいものの、単純なキャッチャーの選手層という意味では二遊間ほどは薄くないというのが個人的な見立てです。
そのほか、もし指名枠に余裕があれば、大山選手の後釜候補となる打撃型選手を確保できればなおいいでしょう。今シーズンもなんだかんだでしっかりと中軸として貢献していて、攻守さすがの安定感を見せつけている大山選手ですが、30代に突入していることから、3~5年後を見据えて素材型の選手を1名確保できれば十分ではないでしょうか。
(個人的には井上選手を一塁にコンバートする前提で外野手を獲るのもありだと思います)
ここまで述べたことをまとめます。
現状のタイガース野手陣容を鑑みたとき、今年のドラフトで狙うべき選手は以下の通りです。
【野手指名方針のまとめ】
- 走攻守三拍子揃った、二遊間の即戦力系レギュラー候補(最低1名)
- 打撃面で期待感のある捕手(最低1名)
- 大山選手の後釜となれる大砲候補(できれば1名)
3.ドラフト指名案
ということで、2024年のドラフトにおいて特に指名優先度の高い選手は「即戦力候補ショート」「打撃型捕手」「エース素材型投手」の三カテゴリであると思います。
ということで、今回はまず1つ目の指名案として、ここ数年でもナンバーワンの即戦力ショートと目されている宗山選手(明治大)獲得を前提とした指名プラン(以下、「宗山選手指名プラン」)を考えてみました。ショートとキャッチャーの即戦力を確保しつつ、中下位で素材型投手を確保する方針です。
一方で宗山選手は競合リスクが非常に高く、くじを外してしまうことも十二分に考えられます。そこで2つ目の案として、高校生キャッチャーでは最も評価の高い箱山選手(健大高崎)を1位指名するプラン(以下、「箱山選手指名プラン」)を考えてみました。打撃型キャッチャーの強化に重点を置いた指名ということで、中位でショートとキャッチャーの即戦力候補を確保するのがこちらの指名の肝となっています。
指名人数としては例年のタイガースと同様に6人を想定しました。また、育成指名については今回の対象外とします。
なお、筆者はただの野球素人ですので、技術的な内容の記載は全くあてにならない点に加え、ドラフト候補選定についても素人筆者の独断と偏見に基づいている点はご了承ください。
【宗山選手指名パターン】
- 1位:宗山塁選手(明治大学)
- 2位:村上泰斗投手(神戸弘陵)
- 3位:石伊雄太選手(日本生命)
- 4位:昆野太晴投手(白鴎大足利)
- 5位:広池康志郎投手(東海大九州キャンパス)
- 6位:ラマル・ギービン・ラタナヤケ選手(大阪桐蔭)
- 1位の宗山選手は、広角に長打も放てる打撃と高い身体能力を活かした無駄のない守備を誇る、誰もが認めるアマチュア球界最高峰のショートです。少なく見積もっても現時点でショートのレギュラー争いに割って入る実力を持っており、ビジュアルを含めスター性も抜群で、いきなりタイガースの顔として活躍しても全く驚きはありません。
- 2位の村上投手は、最速153km/hを誇る高校生ではトップクラスの球威を誇る投手です。直球だけでなくスライダーをはじめとした多彩な変化球の切れも高く、プロで戦うスタミナさえつけば、才木投手に続く地元出身のエース候補として十二分に期待できる逸材です。
- 3位の石伊選手は、二塁到達最速1.8秒台の強さと正確さを併せ持つスローイングを武器にする、守備力では2024ドラフトトップクラスの社会人キャッチャーです。大学時代は課題とされていた打撃も、先日は元巨人の桜井俊貴投手相手に全打席出塁するなど、成長が見られます。湯浅投手とは幼馴染の仲であることもタイガースに縁を感じます。
- 4位の昆野投手は、最速152km/hを誇る、こちらも高校生ではトップクラスの球威を誇る投手です。村上投手と同様、カットボールやスライダー等の変化球もよくコントロールされていて、好投手ひしめく今年の栃木県でも最上位の投手です。能力は上位指名されるだけのものを持っていますが、3年夏に早期敗退したことを受け、4位でも獲れるチャンスがあると予想しました。
- 5位の広池投手は、最速151km/hを誇る、左足を蹴り上げるようなフォームが特徴的な大学生右腕です。速球や変化球をきちんと外角に投げ込むコントロールも魅力です。学業にも力を入れていたゆえに投げ込み不足(本人談)でスタミナが課題とのことですが、そこを鍛えれば楽しみな投手でしょう。タイガースのスカウトもマークしているとの記事が出ていました。
- 6位のヤマル選手は、今年の高校生では最も大きな飛距離を誇る、まさにロマンをかんじさせる大砲候補です。高校通算33本という数以上に、バッティングには日本人離れしたパワーが詰まっています。一方で守備走塁については課題が多く、ここはかなりの鍛錬が必要でしょう。いまだ進路情報が入っておらず、その動向に要注目です。
【箱山選手指名パターン】
- 1位の箱山選手は、高校生ではナンバーワンの総合力を持つキャッチャーです。二塁到達1.8秒台の正確なスローイング、周りを見渡せる広い視野、場外ホームランも放てるパワーと対応力を併せ持つ打撃力など魅力たっぷりで、正捕手候補として育てるにはうってつけの逸材でしょう。筆者もU-18の壮行試合を現地観戦して惚れ込んだ選手の一人です!!
- 2位の伊原投手は、最速149km/hの直球と変化球のコンビネーションで打者を圧倒する即戦力候補左腕です。球威とコントロールを含めた精度が高いレベルで安定しており、特に右打者の内角を突くクロスファイヤーはプロの一流打者でもそうそう打てないでしょう。少なくとも中継ぎであればすぐに通用するのではないでしょうか。
- 3位の山縣選手は、軽やかな守備を最大の武器とする、今年の大学日本代表の正遊撃手を務める即戦力候補ショートです。打撃面においても4年春には打率.366を放ちベストナインに輝くなど成長中です。タイガースには右打ちの二遊間候補がかなり少なく、そういう点も補強ポイントに合致していると思います。
- 4位の清水選手は、愛知リーグで抜群の打撃成績を誇る、長打力が自慢のキャッチャーです。愛工大中村投手を筆頭に、現ソフトバンク岩井俊介投手、名城大岩井天斗投手、中京大髙木投手等、大学球界でも屈指の好投手からホームランを連発しているのも高評価ポイントです。捕手としても二塁到達1.8秒を切る強肩を持っており、「打撃型捕手」としては今ドラフト最高峰の選手です。
- 5位の坂井投手は、今年夏の甲子園大会でも好投を披露した、最速151km/hの実戦力が高い投手です。スライダー等の変化球を交えた緩急も使える上に制球も安定しており、完成度の面では今ドラフト高校生でも上位クラスであるように感じます。スタミナや平均球速といった力強さの面を今後どこまで伸ばせるかがカギになると個人的には見ています。
- 6位の竹内選手は、173cmと小柄ながら逆方向にも長打を量産できるパワーと確実性を併せ持つ強打の外野手です。ドラフト候補の大経大林投手から本塁打を放つ強打に加え、守備力も両翼を守るには十分な身体能力を持っています。地元の兵庫県出身で、かつ高校時代は西純矢投手の1つ後輩でもあり、そういった面もタイガースには馴染みやすいのではないでしょうか。
今回の記事は以上です。
ここまでお付き合いくださり誠にありがとうございました。
次回は2024年広島東洋カープのドラフト戦略について記事にする予定です。