こんにちは。
夏なのに全く食欲が減退せずブクブク太ってしまっている、ベイダーたかはしと申します。
本記事では前回に引き続き、過去20年間のオールドルーキー指名を振り返っていきます。今回はパリーグ各球団の指名についてみていきます。
0.集計ルール
オールドルーキーの定義等については、下記の前々回記事に掲載がございますので、こちらについても目を通していただければ幸いです。
今回記事を読む上で、以下の集計ルールについてはご確認をお願いいたします。
【集計ルール】
- 大卒3年目以上の年齢でNPB球団にドラフト指名され、入団した選手を対象とする。
- 楽天イーグルス参入後の2004年以降にドラフトで指名された選手を対象。
- 育成ドラフトも対象として含める。
- 年齢は、各選手の1年目3月31日時点での数値で集計。
- 移籍経験のある選手は、「ドラフト指名を経て入団した球団」でカウント。
(例.阿部寿樹選手は、楽天ではなく中日の選手としてカウント)
- 「活躍度」については高い順に「☆→◎→○→△→×」の順でランク付け。「活躍度」の定義は以下の通り。
【活躍度:投手の場合】
- ×:通算20イニング未満
- △:通算20イニング以上100イニング未満
- ○:通算100イニング以上250イニング未満
- ◎:通算250イニング以上500イニング未満、または単年タイトル獲得
- ☆:通算500イニング以上、または複数年タイトル獲得
【活躍度:野手の場合】
- ×:通算出場数40試合未満
- △:通算出場数40試合以上200試合未満
- ○:通算出場数200試合以上500試合未満
- ◎:通算出場数500試合以上1000試合未満、または単年タイトル獲得(GG,B9含む)
- ☆:通算出場数1000試合以上、または複数年タイトル獲得(GG,B9含む)
それでは各球団毎のオールドルーキー指名について振り返っていきましょう。
1.オリックスバファローズ
特に一昔前、社会人ドラフトの代名詞的存在であったオリックス。そのイメージ通り、オールドルーキー指名人数21人は全体でも2番目ですが、近年はチーム力も増しているうえに育成枠指名へ多めのリソースを割いているからか、オールドルーキー指名は若干控えめになりつつあります。それでも、社会人ルーキーの指名自体には比較的積極的で、社会人指名においては巧く使いこなしている球団の1つであることは間違いないです。
さて、過去の指名選手に話を移すと、まず思い浮かぶのは2008年小松聖投手の鮮烈な活躍でしょう。15勝3敗、防御率2.51 WHIP1.02 など圧倒的成績で新人王を獲得し、球界ではダルビッシュ投手、岩隈投手に次ぐ存在としてチームの2位躍進の原動力となりました。その後は振るわないシーズンが続きましたが、2008年の1シーズンだけで、今後も伝説的投手として語り継がれる存在ではないでしょうか。
また、佐藤達也投手も同様に、負けず劣らず特大のインパクトを球界にもたらしました。最速155kmのスピンのきいたストレートをがむしゃらに投げ込む投球スタイルで、2年連続最優秀中継ぎ賞を受賞するなど、オリックス投手陣の柱として活躍しました。オールスターにおけるストレート100%の投球チャートはあまりにも有名です。
野手指名に目を向けると、ドラフト下位ながらルーキーイヤーから外野レギュラーとして定着した川端崇義選手、内野全ポジションを守れる縞田拓弥選手等、いぶし銀の活躍を見せた選手が数名います。
また、現役組の比嘉幹貴投手、小田裕也選手、福田周平選手、阿部翔太投手は3連覇に大きく貢献するなど、現在でもオールドルーキー指名の恩恵を受け続けています。今後も彼らにはプロの壮絶な争いに勝ち残ってもらい、ベテラン健在をアピールし続けてもらいたいものです。
2.千葉ロッテマリーンズ
支配下で指名したオールドルーキー全員が投手という偏りを見せるロッテ。近年あまり社会人ルーキーを獲らないイメージがありますが、オールドルーキーに至っては2011年以降の指名人数はわずか2人で、2018年以降の指名はなしと、パリーグでは最もオールドルーキー指名から遠い球団の1つと言えます。
指名した選手で最もコンスタントに活躍したのが大谷智久投手でしょう。キャリア前半期は便利屋、後半期はセットアッパーとして、与えられた役割をハイレベルにこなし続け、累計340試合に登板しました。春のセンバツ大会優勝、社会人選手権大会2連覇など、アマチュア野球の各カテゴリで輝かしい実績を掴んだことでもおなじみです。
また、ルーキーイヤーから4年連続50登板以上を達成した伊藤義弘選手も忘れてはいけません。2010年日本シリーズ胴上げ投手を務めたことからもわかる通り、接戦を任される重要な存在でしたが、それだけに、2011年に折れたバットが突き刺さる事故に見舞われた以降、本調子を取り戻せなかったのが残念でなりません。
現在、チームに在籍するオールドルーキーは、かつてのエース石川歩投手ただ1人となっています。先日怪我から復帰して以降はさすがのゲームメイク力を見せており、2024年8月23日現在では通算79勝の勝ち星を、どこまで伸ばせるか、注目です。
3.福岡ソフトバンクホークス
- 指名人数 :10人(社会人4人、独立他6人)
- ポジション傾向:やや投手偏重型
- 過去の活躍選手:攝津正、山中浩史 など
- 現役選手 :野村勇
四国アイランドリーグからのプロ入り一期生である西山道隆投手を筆頭に、独立リーグからオールドルーキーを多く獲得していたソフトバンク。ただ、阪神で左のワンポイントとして一時期活躍した渡邉雄大投手を除けば成果を得られなかったからか、近年そういった指名は行っておらず、今後も行わない可能性が高いです。
そんなソフトバンクの指名選手に目を向けると、何といっても攝津正投手の輝かしい実績が光ります。デビュー当時はセットアッパーとして最優秀中継ぎ賞を受賞するなど即戦力として活躍したのち、2011年にはチーム事情から先発転向し翌12年には沢村賞を受賞するなど、文字通りエース格として活躍し続けました。繊細に制球されたストレートと超一級品のシンカー、スライダー、カーブ等のコンビネーションで抑える姿は、まさに技巧派右腕の完成形と言って過言ではありません。
また、2012年ドラフト8位で指名された山中浩史投手は、アンダースローを武器に、移籍先のヤクルトで花開いた選手です。特に2015年は、先発不足のチームにて夏場から救世主的な活躍を見せ、チームの逆転優勝に大きく貢献しました。顔もかっこいいですしね。
現在ソフトバンクに所属するオールドルーキーは、野村勇選手ただ1人となっています。川瀬選手や廣瀨選手らと比較して内野のポジション争いでライバルたちに後れを取っている感は否めませんが、持ち前の身体能力を武器に巻き返しを図ってもらいたいものです。
4.東北楽天ゴールデンイーグルス
12球団トップの23人ものオールドルーキー指名を敢行している楽天。戦力不足であった球団創設期だけでなく、近年もコンスタントにオールドルーキーを指名しており、独自路線と言われがちなドラフト戦略の一端が窺えます。
創設期には野手を多く指名し、質量ともに大きく不足していた戦力層の拡充を図りました。中でも渡辺直人選手は俊足堅守と粘り強い打撃を武器に、1年目からショートのレギュラーに定着し、毎年のように安定した成績を残し続けました。その後横浜→西武→楽天と球界を渡り歩きましたが、どのチームでも内野全てのポジションを守れることで重宝されました。人格面でも優れており、横浜移籍時に楽天のチームメイトたちが異を唱えたことでも知られています。
また、創設期を支えた野手として、草野大輔選手の名前も欠かせないでしょう。29歳の遅さでプロ入りすると、特に2009年シーズンには一時期打率四割越えを果たすなど、球界屈指の巧打者として名を馳せました。
その他野手では外野の準レギュラー格であった中村真人選手、投手では左のワンポイントとして重宝された渡邉恒樹投手等、創設期の薄い選手層を補う指名がいくつか見られましたが、一方で一軍での出番少なく引退した選手も数多くいました。
現役メンバーでは中日から移籍の阿部寿樹選手に加え、瀧中瞭太投手、吉川雄大投手、小孫竜二投手という3人の投手が在籍しています。瀧中投手はすでに先発としてある程度実績を残しておりますが、他2人についてはまだまだ実績としては物足りない状況で、特に小孫投手については最速156kmのポテンシャルを早くプロでも発揮してほしいものです。
5.埼玉西武ライオンズ
- 指名人数 :7人(社会人6人、独立他1人)
- ポジション傾向:投手偏重型
- 過去の活躍選手:牧田和久 など
- 現役選手 :平井克典、森脇亮介、糸川亮太
パリーグ最小の7人のオールドルーキーを指名している西武。そのほとんどが長年の弱点と言われる中継ぎ陣の補強を目的としています。また、他球団にも増して変則投法の投手を優先的に獲得していることも特徴的です。
その変則投法の元祖にして最大の活躍を見せたのがアンダースローの牧田和久投手です。最速130km台ながらストレートで押し込む投球スタイルで、ルーキーイヤーからいきなり先発中継ぎの両方で大車輪の働きを見せて新人王を受賞すると、以降はエース格に定着、のちには再びセットアッパーに戻って活躍と、まさに「最強の便利屋」と言うべき存在でした。代表チームでも「最強の便利屋」として、まず間違いなく名前の挙がる存在でした。
その牧田投手がメジャー挑戦する前後あたりから頭角を現したのが、躍動感あるサイドスローでボールを投げ込む平井克典投手です。中でも2018年には64試合、2019年には81試合(パリーグ記録)と毎試合の如く登板し、強力打線の裏でゲームを締め続け、2連覇に大きく貢献しました。昨年FA宣言のうえ西武残留を決意したこともあり、一層チームを引っ張る役割を期待したいです。
また、平井投手と並び、近年の投手陣を引っ張ってきた存在が森脇亮介投手です。平井投手がやや勤続疲労気味になった2020年あたりからセットアッパーとして登板機会を増やし、投球前に直立姿勢で脱力する独特のフォームと甘いマスクで、ファンの心を掴みました。ただ、昨年に腕の怪我で手術を行いリハビリ中で、今シーズンはなかなか投球を見られないのが残念な所です。
それだけに、2023年ルーキーの糸川亮太投手には、変則オールドルーキー右腕の系譜を継いでもらい、大車輪の働きを期待したいものです。糸川選手のフォームは先代3人と比較すると、そこまで変則的ではないかもしれませんが・・・。
さて、ここまでお読みいただいたみなさまであればお気づきかと思いますが、戦力層の薄いチームは「即戦力ドラフト」を敢行することが多く、その際にオールドルーキーも複数人指名されることが多いです。2024年8月現在西武はかなり成績が低迷しており、今年オールドルーキーを指名する動機を最も強く持つ球団ですが、果たしてドラフトではどのような方向に舵を切るでしょうか。
6.北海道日本ハムファイターズ
日本ハムの補強戦略の特徴として、海外リーグから積極的に人材を取り入れる点が挙げられますが、その傾向はオールドルーキー指名でも如実に現れています。
マイケル中村投手はいわゆる「逆輸入選手」の代表格的選手です。大きな変化量のスライダーを武器に、2006年にはセーブ王に輝きに日本一に貢献するなど、日本ハム、巨人の二球団でブルペン陣を支え続けました。
また、一部ファンにカルト的な人気を誇る多田野数人投手も、持ち前の投球術を武器に、便利屋として投手王国の日本ハムにはなくてはならない存在でした。独特の小股フォーム、超スローボール、日本シリーズの危険球騒動等…、とにかく記憶に残る投手でしたね。
「逆輸入選手」以外でも、数多くチームに貢献したオールドルーキーはいます。たとえば武田勝投手は、ロッテ成瀬投手と並ぶパリーグ左の軟投派エースの代表格として、ダルビッシュ投手と共に日本ハム投手陣の大黒柱となりました。通算WHIPがわずか1.09であるなど、特にキャリア全盛期は安定感あふれる投球をしながらも、なかなか援護に恵まれず、「負け運」の代名詞的な存在となったことでもお馴染みです。
一方で、増井浩俊投手は、主にセットアッパーやクローザーとして、持ち前の剛球と落差の大きいフォークを武器に、日本ハム/オリックスの二球団で活躍し、通算で163セーブ&158ホールドを挙げた投手です。一方でキャリア後半期には先発としても適性を見せ、特に2016年の逆転優勝に増井投手の神がかったピッチングは不可欠でした。
その他、橋本義隆投手、矢貫俊之投手、森内壽春投手等、投手を中心にプロの世界で一定の貢献を果たした選手を数多く指名できています。
「逆輸入選手」を多く指名しているとはいえ、オールドルーキーをきちんと即戦力として活用できているケースが多く、12球団で最もオールドルーキーをうまく指名できているチームの1つであると考えています。
現所属メンバーでは上川畑大悟選手、加藤豪将選手、宮内春輝投手の3人が在籍しており、特に上川畑選手はオールスター出場を果たす程の人気選手となっただけに、今後も継続的な活躍が期待されます。
栗山監督時代にはほとんど見られなかったオールドルーキー指名ですが、新庄監督の下ではちらほら指名が行われており、現有戦力のテコ入れを行っていることが窺えました。今シーズンは久々のAクラスへ視界良好ですが、来期以降更に優勝に近づくことを目指して、戦力補強として2年ぶりのオールドルーキー指名はあるのでしょうか。そういう見方でドラフトを妄想するのも一つの楽しみ方だと思います。
以上、パリーグのオールドルーキー指名について振り返っていきました。
オールドルーキー指名に関する記事は、一旦ここまでとさせていただく予定です。
次回の記事では、これまでの育成ドラフトについて同様に振り返っていく予定ですので、ご興味のある方はぜひお待ちいただけますと幸いです!
それではここまでお読みくださり、誠にありがとうございました。