みなさんこんにちは。ベイダーたかはしと申します。
昨年東京ドームで行われた試合の帰りにドーム周辺をうろうろしていたら、タクシーにウィーラーコーチが乗っていて、思わず手を振ってしまったところ、笑顔で手を振り返してくれて感動しました。
思い出話はほどほどにしておいて、本記事では前回に引き続き12球団の2024年ドラフト考察シリーズということで、今回はリーグ優勝を成し遂げた読売ジャイアンツの2024年ドラフト戦略について考えていきたいと思います。
※なお、記事の作成に時間がかかってしまい、岡本和真選手のメジャー挑戦の可能性をあまり考慮できていない内容となってしまっています。大変申し訳ありません。
1.現状整理(投手編)
【表の見方】
- 年齢は「2025年3月31日」時点での数字を記載しています。
- 今シーズンの一軍出場機会が多い順に「赤太字→赤細字→黒字→青細字→青太字」で表記しています。(2024年9月29日時点)
- 育成契約選手は表に記載できていません。
今シーズン、4年ぶりのリーグ優勝を果たしたジャイアンツ。その原動力の一つとなっているのが投手陣の安定感であり、9月29日時点の失点数379は12球団最小です。編成面を見ても、先発にも中継ぎにもジャイアンツを長く背負い続けられる若き主力がたくさんいます。
まず先発陣ですが、奪三振王間違いなしの戸郷投手を筆頭に、全盛期のクオリティを取り戻した菅野投手の2名が、エース級の主戦投手としてセリーグを席巻しています。3番手以降にも、多彩な変化球を武器の山崎投手、球威抜群のグリフィン投手、今シーズン一皮も二皮もむけた井上投手、制球力自慢の赤星投手などがなかなかの結果を出しており、ローテーション投手を6枚並べたときの実力は12球団でも随一といっていいでしょう。
実力面だけでなく、年齢面を見ても先ほど挙げた6名のうち4名は20代中盤と若く、少なく見積もっても5年間は先発投手不足になる可能性は低いように思います。
また、菅野投手がベテランに差し掛かっているという懸念がないわけではありませんが、横川投手や堀田投手、高橋礼投手といった今年一軍である程度の成績を残しているメンバーだけでなく、西舘投手や又木投手、森田投手といった23年ドラフト組もファームで着実に力を蓄えています。このように今年のローテーションメンバー以外にも力のある先発候補が多いことから、即戦力候補の先発投手を獲得する必要性は他球団と比較して薄いという見立てです。
もっとも、ジャイアンツは野手も含めて現有戦力面で致命的な弱点は抱えていない印象で、かつシーズン後半は6枚目の先発投手が定まっていないことから、上位で1名即戦力候補の先発投手を獲る戦略もありうると考えています。今回の記事で後述する指名パターンには載せていませんが、1位で金丸投手(関西大)や中村投手(愛工大)といった目玉投手を獲得する戦略もあっていいとは思います。
次に中継ぎ陣を見ていくと、今シーズン一軍で活躍している中継ぎ左腕が比較的ベテランに偏っているところは補強ポイントといえるかもしれません。今シーズン左の中継ぎとして出番を得ているのがバルドナード投手と高梨投手の2名であり、この2名は今年32歳を迎える年齢となっています。
左の中継ぎメンバーとしては、他に中川投手や大江投手、今村投手といった実績ある面々に加え、まだ若い山田投手も含めて二軍では安定感のある成績を残しています。ですので、左の中継ぎについても緊急性が高い補強ポイントとまでは言えませんが、とはいえ若干高齢化が気になるポジションでもありますので、指名枠に余裕があれば1名指名したいところです。
現有戦力に大きな課題を抱えていないジャイアンツ投手陣ですが、むしろ問題なのは、戸郷投手や大勢投手といった20代前半世代に続く次の世代の主力投手候補が非常に少ない点でしょう。22歳以下の投手のうち、石田投手と代木投手はトミージョン手術が発表され、京本投手は今シーズンここまで足踏みのシーズンとなっています。数多く抱えている育成投手を見ても、分厚い現有戦力に跳ね返されてか、22歳以下で支配下に上げたくなる投手は今のところ少ない印象です。
常勝軍団復活を掲げて即戦力候補を取り続ける選択もなくはないかもしれませんが、それよりも現有戦力に余裕があるうちに3~5年後への投資を行うべきではないかと思います。
したがって、今年のドラフトにおける投手指名は、高校生投手を中心に育てがいのある好素材を優先して指名すべきでしょう。ここ2年は支配下で高校生投手を指名していないことも踏まえ、支配下で2,3名獲得しても全く問題はないはずです。(育成指名を含めて何人指名するかジャイアンツの場合はわかりませんが・・・。)
ということで、ここまで述べたことをまとめます。
現状のジャイアンツ投手陣容を鑑みたとき、今年のドラフトで狙うべき選手は以下の通りです。
【投手指名方針のまとめ】
- 未来のエース候補として、育てがいのある高校生投手(支配下で2名程度)
- バルドナード投手や高梨投手に次ぐ即戦力左腕中継ぎ候補(1名)
2.現状整理(野手編)
【表の見方(再掲)】
- 年齢は「2025年3月31日」時点での数字を記載しています。
- 今シーズンの一軍出場機会が多い順に「赤太字→赤細字→黒字→青細字→青太字」で表記しています。(2024年9月29日時点)
- 育成契約選手は表に記載できていません。
続いてジャイアンツ野手陣の現状について見ていきます。こちらも、現有戦力について他球団の野手陣と比較すると大きな穴は少ない印象ですが、とはいえ課題がないわけではありません。
まず内野陣についてですが、ここは門脇選手の現在地をどう見るかによって大きく変わると思います。今シーズンも門脇選手はショートのファーストチョイスとして多く出場しており、特に守備面に関してはリーグ屈指の存在として定着しています。一方で打撃面は今のところ伸び悩みを見せており、特に長打力という面では昨年よりも期待値を落としてしまっています。
参考として昨シーズンと今シーズン(2024年9月29日)の門脇選手の打撃成績を比較すると、
であり、極端な打撃難とまではいえないものの、改善が必要なポイントであることは間違いないでしょう。
門脇選手の他のショート候補でいうと、泉口選手や中山選手、湯浅選手など成長株が何人かいますが、いずれも現状の能力的には一長一短で、一軍の不動のレギュラーを任せるには決め手に欠ける印象です。とはいえ、ここで名前を挙げた選手たちはいずれも二軍では確かな成績を残しており、伸びしろもまだまだあるため、彼らと総合力が変わらないと思われる選手については無理して獲得する必要はありません。(むしろ編成的にだぶつく印象です)
ということで、ショートの即戦力候補については補強ポイントであるものの、あくまで現有のショート候補を総合力で上回ると思われる選手に限って優先的に狙うべきでしょう。狙うべきショートの即戦力候補については、やや衰えがみられる坂本選手が中心に守るサードのポジションも含めて競争できる打力があれば言うことなしです。
現有戦力でいえば、長年レギュラー選手の決め手に欠けているセンターについても、補強ポイントの一つでしょう。
今シーズン、9月29日時点で以下の選手がセンターとしてスタメン出場しています。
- ヘルナンデス選手:50試合
- 丸選手 :32試合
- オコエ選手 :23試合
- 佐々木選手 :14試合
- 萩尾選手 :14試合
- 立岡選手 :5試合
- 浅野選手 :3試合
- 増田大選手 :1試合
上記を見ると、助っ人のヘルナンデス選手とベテランの丸選手にセンター起用が集中しています。この二人は攻撃面でこそ大きなプラスをもたらし、守備面でも大きな破綻はないものの、年齢や敏捷性を考えるとできれば両翼を任せたい人材です。
彼らに続くオコエ選手、佐々木選手、萩尾選手はタイプに違いこそあれど、攻守ともに一定の貢献度が見込め、年齢もまだ20代中盤であることから来年以降のセンター候補として期待できる存在です。特にオコエ選手は優勝争いの中で決定的な一打を放つことも多く、今季は期待値を上回ったシーズンと言えるでしょう。
ということで、センターのレギュラーを数年間任せられる存在こそ不在ですが、選手層自体はそこまで薄くない印象です。従って、ショート候補と同様、現有戦力を上回る総合力を持っている見込みがある選手でもない限り、今年のドラフトで無理して即戦力候補のセンター系選手を獲得する必要性は薄いように思います。
即戦力系の指名についての言及はこれくらいにして、最後に20歳前後の野手選手層について見ていくと、何人か有望な芽が生えてきており、投手ほどは手薄ではない印象です。すでに一軍戦力として定着しつつある浅野選手、今シーズン支配下に昇格した中田選手の支配下二名だけでなく、イースタンで本塁打を量産しているティマ選手、外野手としての総合力の高い笹原選手などがキラリと光る成績を残しています。
ですので、野手については無理やり高卒選手を多く獲得する必要はないように思われますが、とはいえ昨年は1人も高卒野手を獲得していません。二、三軍の実戦環境を活かすためにも、今年は高卒野手を支配下で1人は獲得するべきではないかと思います。
ということで、ここまで述べたことをまとめます。
現状のジャイアンツ野手陣容を鑑みたとき、今年のドラフトで狙うべき選手は以下の通りです。
【野手指名方針のまとめ】
- 未来の中軸候補として、ポテンシャルを秘めた高校生野手(支配下で最低1名)
- 現有戦力を総合力で上回る見込みがある即戦力候補ショート(できれば1名)
- 現有戦力を総合力で上回る見込みがある即戦力候補センター(できれば1名)
3.ドラフト指名案
現有戦力分析で述べたことを圧縮すると「投手は将来性豊かな選手」「野手は極上のクオリティを見込める即戦力系ショートorセンター」を優先度高く指名すべきでしょう。
このうち、野手の指名ポイントを満たすうえでうってつけの即戦力候補ショートが今年のドラフト候補にいます。言うまでもなくそれは明治大宗山選手なのですが、今回は彼を軸にした指名パターン(以下、「宗山選手指名パターン」)をドラフト指名案の1つ目として作成しました。宗山選手を軸に現有戦力の補強ポイントをバランスよく埋めることを目指した指名となっています。
もう一つの指名パターンとして、ここ数年支配下で指名しておらず、かつ支配下昇格が近そうな存在も少ない高卒投手にリソースを割く指名方針も考えられるでしょう。そこで第二案として、高卒左腕ではナンバーワンの東海大相模高藤田投手を軸として、伸びしろの大きさを重視した将来性重視の指名パターン(以下、「藤田投手指名パターン」)を作成してみました。少し極端な指名案かもしれませんが、昨年は即戦力に極振りの指名を行ったこと、現有戦力に大きな隙のないことを考えると、今年こそ将来性に振り切った指名もあっていいのではないかと個人的に思います。
なお、近年ジャイアンツは支配下指名の人数を少なめにし、その分育成を含めて有望株を獲得する印象があるので、今回も支配下指名は5名想定で案を作成しています。
【宗山選手指名パターン】
- 1位の宗山選手は、広角に長打も放てる打撃と高い身体能力を活かした無駄のない守備を誇る、誰もが認めるアマチュア球界最高峰のショートです。今年はやや怪我に悩まされていましたが、完治後のプレーも一切隙はなく、即戦力性も高いと思われることから、野手の一番人気銘柄であることは間違いありません。
- 2位の宇野選手は、高校通算64本塁打を誇る、今年の高校生ではトップクラスの強打を誇るショートです。打撃フォームは既に無駄のない印象で、木製バットでの対応力の高さも見せています。50m6.1秒となかなかの俊足も持ち合わせており、フットワークの軽さも魅力です。
- 3位の飯山選手は、元日本ハム飯山裕志氏を父に持つ、俊足強肩が持ち味のセンター系外野手です。50m6.3秒の計測タイム以上に素早い印象で、特に広範囲のセンター守備は今年の大学生でも最上位と考えています。打撃面については東都2部で安打を量産するものの1部での経験が乏しく、そこをどう評価するかがポイントになるかもしれません。
- 4位の冨士投手は、186cmの身長以上に手足の長さを感じさせる、奪三振能力の高い高校生左腕です。やや変則気味の球持ちのよいスリークォーターから放たれる最速144km/hの直球は、球速以上に打ちづらいボールであるように思います。横川投手に続く大型高校生左腕の素材としてはうってつけではないでしょうか。
- 5位の中島投手は、最速151kmの直球を軸に奪三振を量産する社会人左腕です。今年の6月には日立製作所相手に1失点完投勝利を収めており、複数イニングでも力投を続けられる体力があります。社会人ながらここ数年で球速が伸びている一方で制球には課題があり、今後の伸びしろも含めて期待すべき投手でしょう。
【藤田投手指名パターン】
- 1位の藤田投手は、身長198cmの高身長を活かし、クセのないフォームで最速150km/hの威力あるストレートを投げ込む高校生No.1左腕です。体格の割に制球も安定しており、完成度とスケール感をハイレベルに兼備した逸材です。U-18壮行試合におけるvs飯山選手(立正大)の投球はまさに圧巻で、その日登板した大学生投手と比較しても一番の球威を感じました。
- 2位の清水投手は、身長193cmの高身長から最速149km/hのストレートを投げ下ろす、今ドラフト屈指の大型右腕です。制球面はまだまだ荒れる場面も見られるものの、コースに決まった時の直球の威力は驚異的です。育て上げればライデル・マルティネス投手のような支配的な投球を想像させる逸材です。
- 3位の正林選手は、広角に長打を放てる、コンタクト能力に優れた高校生外野手です。打撃だけでなく50m6.0秒の俊足と遠投100mの肩と、外野手として守備面でも貢献できるだけの身体能力も備えています。今年の高校生外野手では総合力No.1といえる存在ではないでしょうか。
- 4位の颯佐選手は、俊足強肩の身体能力が今ドラフトでもトップクラスの高校生ショートです。投げても最速148km/hを誇るなど二刀流の可能性も感じさせる選手ですが、低身長ゆえの俊敏性を活かすためにも野手としての指名が濃厚です。本人が憧れるソフトバンク今宮選手を彷彿とさせる、身体能力が持ち味の万能選手となる可能性を秘めた好素材です。
- 5位の木下投手は、ややクロスステップ気味のフォームから最速156km/hのストレートを投げ込む、社会人屈指の剛腕投手です。球速の割に空振りを奪う場面が少ない印象ではありますが、今年の都市対抗野球で自己最速を更新するなど、さらなる伸びしろにも期待できる投手です。
どちらの指名案も、ジャイアンツが「常勝軍団」を継続進化させていくうえで悪くない形になったのではないでしょうか。
ということで、今回の記事は以上です。
ここまでお付き合いくださり誠にありがとうございました。
次回は2024年東京ヤクルトスワローズのドラフト戦略について記事にする予定です。